安易な民間委託の行き着く先は?

公募型プロポーザルによる民間活力導入の落とし穴

現在志木市は様々な事業において積極的に民間活力を利用する政策をとり多数の公募型プロポーザルの募集を行っており、市のHP内を「公募型プロポーザル」で検索した場合近隣の市よりもその数が多いように見受けられます。公共事業の業者選定においては競争入札が原則であり公募型プロポーザルも競争入札の一種ではありますが、従来の競争入札と比べると以下のような違いがあります。公募型プロポーザルでは業務のやり方自体を業者が提案して受注しますので業務の遂行にあたっては業者側の裁量権が強くなります。別の言い方をすれば業者任せ=丸投げの度合いが高くなる危険性もあります

市が提示するもの業者が競うもの業務遂行上の裁量権
従来の競争入札具体的な業務内容価格市側が強い
公募型プロポーザル業務の大枠(ガイドラインと予算)具体的な業務の提案業者側が強い

公募型プロポーザルは市側は業務の大枠だけ示して業者を選定すればあとは業者にほぼお任せという市側にとって大変便利な仕組みではありますが、要求する業務に見合う予算枠が提示されていないと業者からは採算が取れそうにないとそっぽを向かれ応募者が集まらないというケースもあります

志木市では市のHP内をざっとみただけでも募集しても1者しか応募がない1者応札(用語上「社」でなく「者」と書くのは業者が個人事業主の場合もあるため)が2021年だけで少なくとも5件もあり、5件ともそのまま応募した1者が採用されました

いろは親水公園リニューアル事業では地元企業にしわ寄せが?

別項でも書いてきましたがいろは親水公園のリニューアル事業にあたっては当初10者が参入意欲を示したものの最終的には1者しか応募せず、そのままその1者が受注しました。つまり圧倒的多数がこの公募型プロポーザルでは採算が取れないと評価したわけで、もともとの市側の要求自体に無理があった、要は予算枠から見て過大な要求をしていたということだと思われます。市が自分で具体的な業務と必要な予算をきちんと計算することをせず、民間に丸投げしてしまえばうまいことやってくれるだろうと安易な公募型プロポーザルを行ったが頼みの民間からはその予算枠では無理だとそっぽを向かれてしまったということではないでしょうか?

しかし1者は採算がとれると見通して応募し採用されたわけですが、この採算見通しの根拠はこの会社のグループ内にパン屋さんがあり、いろは親水公園の中洲でベーカリー事業を行うことで採算をとろうとしているようです。しかし中洲から半径1km以内には地元のパン屋さんが4軒もあります。中洲のベーカリーが繁盛すればその分地元のパン屋さんの売り上げが減るわけで市が自らの施策で地元の活力を奪うことになります。この流れをまとめると以下のようになりますが、安易な民間活力導入が地元企業を苦しめるという最悪のシナリオが進められているわけです

市が進めている最悪のシナリオ

  1. 市が無理な公募型プロポーザルを実施
  2. 受注企業が採算を取るためいろは親水公園でベーカリー事業を行う
  3. ベーカリー事業が成功すると近所の地元のパン屋さんの売り上げが減る
  4. 市による市外からの民間活力導入が地元の民間活力を殺す

スマート教員ではやりがい搾取の心配が

志木市では以前から市費で小学校の教員を増員し少人数学級を実現する「少人数学級編制事業(ハタザクラプラン)」を行ってきましたが、平成31年度(2019年度)からこれをやめ、県採用の教員と市費採用の教員(スマート教員)とでチームティーチングを行う「複数・少人数指導体制」に変更しました。市費で小学校の教育の充実を図ろうとする政策はたいへん素晴らしいと思いますが、このスマート教員を市が直接募集するのではなく派遣事業者を利用しようとし公募型プロポーザルを行いましたが、ここでも応募は1者のみでそのままその1者が採用されました

現在の日本ではこうした派遣事業を行う企業は少なくありませんが、ここでも1者しか応募がなかったということは市が予算枠に対して過大な要求をしており採算がとれると見込んだ企業が1者しかなかったということでしょう。ではこの1者はどのようにして採算をとる見通しなのでしょうか?学校への教員派遣という事業でコストカットしようとすれば対象は人件費くらいしかありません、つまり派遣される先生たちの報酬が削られていくのではないかということが心配です

最近様々な業界でのやりがい搾取という言葉が報じられるようになってきました。私自身非常勤講師として27年間教育現場にいたので身にしみてよく知っていますが、学校はとてもやりがい搾取がおきやすい所です。スマート教員は報酬もスマートなどということにならないことを願います

<関連リンク>

高齢者福祉でも1者応札が3件

高齢者福祉関連でも以下の3つの公募型プロポーザルがそれぞれ1者応札でそのまま応募者が採用されました。高齢者福祉を民間に任せてコストカットが行われた結果高齢者にしわ寄せが行くようなことがないように願います

<関連リンク>

最後に

1者応札が100%悪いとは言いませんが、やはり1者しか応募がない、それが何件もある、ということは募集内容自体に無理があるということだと思います。市長は二言目には民間活力と言いますが、無責任な民間だのみが1者応札を招いているのではないでしょうか?無理のある民間委託を行った結果市民生活にしわ寄せが来ることがないようにしていただきたいものです

追記 – 2022/1/28

また1件、1者応札でした。本件がとかこの受託業者がというつもりはありませんが、これだけ1者応札が多いと、価格は予算枠内の最高ライン、提案業務内容は要求水準の最低ラインという競争になればまず勝てないボッタクリ提案をダメ元で応札しておいて1者応札になって取れたらラッキーといった考えで応札する業者が出てこないとも限りません。市長の好きな民間活力は市場の競争原理によって鍛えられて育つものですが、1者応札では競争原理は働かず単なるボロい儲け口になりかねません
最新情報をチェックしよう!

市政の最新記事8件

>今井あさと

今井あさと

埼玉県志木市在住。敷島神社の近くに住んでます。27年間ほど都内の私立高校で非常勤講師をした後にフリーランスのプログラマを経て現在はほぼ休業中。非正規一筋の人生です(笑

非常勤講師で教えていたのは公民科(政治経済・現代社会・倫理など)。今でも政治や社会に強い関心があり、志木市の政治についても詳しく見てみようと思いこのようなブログを立ち上げました

CTR IMG