志木市の小中一貫教育について考える

現在、志木市は小中一貫教育を推進するために学校の再編を進めています。具体的な情報は市のHPの『小中一貫教育について』のページ等でいくつか公開されていますがなかなか全体像がよくわからなかったので私なりに調べてみました

関連リンク
合併をともなう義務教育学校化の問題点

小中一貫教育には2つのパターン

市が公開している志木市小中一貫教育基本方針【概要版】 によれば小中一貫教育には以下の2パターンがあるようです

義務教育学校
小中学校を合併して1つの学校にする。校舎の変更その他(校名・校章・校歌等)の大きな変化をともなう

小中一貫型小学校・中学校
今まで同様に小中別々の学校のままで各校が教育目標や教育課程を統一し連携して教育を行う。児童生徒・保護者からみれば今までと同じ学校のままで教育内容の改革・向上が目指されたり他校との交流が増えるという感じで特に大きな変化は感じられなさそう

志木市ではどちらのパターンに?

現在志木市には公立中学校が4、公立小学校が8ありますが、これを中学校区別に1中学校+2小学校の4グループに分けるようです。そして、志木第二中学校区は義務教育学校化が決定、他の3グループはどちらにするか検討中らしいですが、各学校の位置から考えると3校を合併する義務教育学校化は難しそうに思えます
志木市のタウンマップで現在の小中学校に中学校区別に色分けして●をつけてみました。志木第二中学校区は3つの学校が隣接しているため一つの学校に合併できそうですが、他の3つのグループはどれも1つまたは全部が離れており、1つの学校として3つの校舎を有効利用するのは難しそうです

志木第二中学校区の義務教育学校化について

志木第二中学校区の義務教育学校化についてはすでに話が進んでいっているようですが私はいくつか気になることがありました

マンモス学校
この義務教育学校に合併される三校の児童生徒数(令和5年4月1日現在)は志木第二小学校(521人)・志木第四小学校(424人)・志木第二中学校(424人)で合計1369人、これを1人の学校長と1つの教職員組織で見てゆくことになりますが、学校長1人でどこまで目が届くのか?教職員組織も巨大になりますが一般に大きな組織ほど意思疎通に時間がかかり動きが鈍くなりがちですが、そうならずに柔軟できめ細かい指導ができるのか疑問です。昔は1000人以上のマンモス学校も珍しくありませんでしたが、日本が物質的に豊かになり時代が進んで来るなかで学校も小規模できめ細かい教育をめざすようになってきたはずが逆行しているように思います

校舎利用
志木第二中学校区義務教育学校開校準備委員会(第2回)の会議報告によると、校舎は志木第四小学校舎を小学4年まで、志木第二中学校舎を小学56年と中学生で使い、志木第二小学校舎は部活と家庭科や音楽室などの特別教室棟として使うことを検討中らしいです。私は9年一貫教育という言葉を聞いて、てっきり1つの校舎に1〜9年生が一緒に学ぶものとばかり思っていましたが、義務教育学校が全国的にも増え始めていると言っても一校舎型は少なく、多くは既存の校舎利用を前提に再編するのでこのように複数校舎になることが多いようですが、一貫教育と言っても敷地も校舎も別々では児童生徒にはその一貫性が意識されにくいだろうと思います。また、この人数で全校集会や運動会など全児童生徒が一堂に会する機会はどれだけ作れるでしょうか?1つの学校なのに全児童生徒が集まる機会がなく運動会も校舎別開催などということになるとますます一貫性は意識されなくなると思います

教室は足りるのか?
ところでこの再編の仕方で教室は足りるのでしょうか?現在志木第二小学校には20学級ありこれが他の2校舎に吸収されることになりますが、そんなに空き教室があるものなのか?もし足りなければ一部は志木第二小学校の校舎を使う(それでは結局3校舎体制)とか1つの学年が2校舎に分かれてしまうとかいうことにはならないのか?

1学級あたりの人数は?
また非常に重要な問題として2小と4小を合併すると法律で定められた学級編成の計算方式によりほぼ確実に1学級あたりの人数が増えることになり(この点については別項『合併をともなう義務教育学校化の問題点』をご覧ください)、これは教育環境の大きな悪化となります。私は小中一貫教育の考え自体には賛成ですが1学級の人数が増えることとマンモス学校の問題を合わせるとこの志木第二中学校区の義務教育学校化はメリットよりもデメリットの方が大きいと思います。このデメリットを考えると無理して義務教育学校化せずに今までどおりに3つの校舎を活用する小中一貫型小学校・中学校の方が良いと思います

中1ギャップ

小中一貫教育のメリットの1つとして中1ギャップの緩和ということがしばしば言われますが、文部科学省の下にある国立教育政策研究所が発行している『「中1ギャップ」の真実』というリーフレットではそもそも中1ギャップという言葉自体根拠が薄弱でいじめや不登校の実態を見誤らせるものであり『「中 1 ギャップ」に限らず、便利な用語を安易に用いることで思考を停止し、根拠を確認しないままの議論を進めたり広めたりしてはならない。』と警告しており、これは傾聴に値するものだと思いました。小中一貫教育がただちにいじめや不登校の緩和に役立つかのような議論には注意が必要かもしれません

最新情報をチェックしよう!