志木市将来ビジョン
「志木市将来ビジョン」とは志木市の様々な施策の頂点となる最上位計画だそうで10年単位で策定しており、現在は第一次将来ビジョンが令和8年3月で終了するため、第二次将来ビジョンの策定にとりかかっているそうです。そしてその一環として市民参加ワークショップ(令和6年11月)が開かれたので参加してきました。本稿執筆時点では全5回中3回まで終了しましたが、毎回30人程度の市民が参加し熱心なワークショップとなっていました。以下、私の感想など
第0回 キックオフミーティング
ワークショップに先立ちキックオフミーティングとして香川市長の基調講演のような会があり、市長が最近の市政の成果を述べていました。途中「〜で新座に勝った」と三回ほど言っていて、そういうのは一回なら微笑ましくとも何度も言うとカッコ悪いななどと思いながら聞いていましたが、1つとても気になる発言がありました
ふれあい号廃止は最大多数の最大幸福のため
香川市長はふれあい号(福祉施設巡回無料バス)を今年度から廃止してしまった理由について、経費その他をるる述べながら、最後にこの決定は「最大多数の最大幸福」のためであったと言いました。「最大多数の最大幸福」はイギリスの思想家ベンサムの有名な言葉で、多数決を是とする論拠とされる一方、そもそも「最大幸福」として幸福を数値化することには無理があること、しばしば少数者の幸福を切り捨て少数者に犠牲を強いることを正当化する論拠ともされる危険性があることも広く知られています。そして、香川市長のこの文脈での「最大多数の最大幸福」発言は明らかにふれあい号存続を求めていた高齢者たちの切り捨てを正当化するためのもので、そういう発言が志木市将来ビジョンを考えるキックオフミーティングで述べられたことには強い違和感を覚えました
第一次将来ビジョンの達成率
香川市長は来年には市長選挙もあるので成果を誇りたかったようですが、市の第一次将来ビジョンのページで公表されている『志木市将来ビジョン・後期実現計画 成果指標達成状況 総括表』によると未達成が41/78で52.6%と半分以上で、これに部分達成(達成率40%未満)も加えると50/78で64.1%となりかなりお寒い状況のようです
第1回『市民力が生きるまちづくり』
子育て、教育、高齢者、市民協働、すべて人
- 志木市の「市民力」活用について、子育て・教育・高齢者・市民協働・すべての人の5つの論点から考えようということでした。最初の4つはどれも大切ですし、対象がはっきりしているので具体的に論じやすいですが、最後の「すべて人」は「その他大勢」とほぼ同義でとても曖昧なくくりだと思います。そして実はこの「その他大勢」の方が文字通り圧倒的に人数が多いのではないか?日々仕事に追われ住居は寝に帰るためだけのものといったベッドタウン型ライフスタイルの市民に目を向けずに「市民力」を論じようとすることには物足りなさを感じました
- コミュニティについては志木市にも様々なものがあり、熱心に活動されている方々がいる一方、どんなコミュニティがあるのか知らない、参加しようにもその糸口がないと感じるという発言がたくさんありました
- 私がいたグループでは今後の方向性として「愛着のもてるまちづくり」というキーワードがまとまりました
第2回『市民を支える快適なまちづくり』
健康、福祉、生涯学習、スポーツ
- 高齢者福祉について、ふれあい号廃止で出かける回数が減った、電気代を惜しんで暑くてもクーラーをつけない、孤独死などが話題になりました
- 「高齢者に表に出ろというが、出てもいくところがない」という声もあり、高齢者の行き場としてシニア食堂や空き家カフェなどを作れないかという提案も出ていました
- 私は市民が今よりもっと気軽に散歩に出たくなるようなまちづくりとして、最近市内にベンチが増えているのはとても良い施策であり、今後はベンチとともに水飲み場が増やせたらもっといいのではないかと思いました。日常的に街に出る人が増えれば商業振興にも寄与しますし、なによりも街の活気づくりになるのではないかと思います
- 市は健康関連の施策として健康増進センターの設置やいろは健康ポイント事業などを行っており、参加している市民には好評だが、知らない市民の方が圧倒的なのではないか?
- 小さくていいから近所に公園がほしいという声が結構強く聞かれました
- 参加者と意見を交わしながら「孤独死0の社会ってどうやったらつくれるのだろうか?」と考えさせられました
第3回『活力と潤いのあるまちづくり』
産業振興、観光、水と緑、地球環境、資源循環
- 産業振興について、コロナ以降テレワークが増加しており現在でもコロナ前より高い比率が続いている。これによって志木市でも昼間人口が増加しているはずでありランチの需要なども増えているのではないか?また往復2~3時間の通勤時間がなくなった人たちはその分自由な時間が増えており、そこに訴求するビジネスチャンスもあるのではないかと思います
- 自然との共生について、いろは親水公園のウォーターパークは遊具としては結構だが、新河岸川の水と触れ合っているわけではなく、自然との共生という点は弱い。またウォーターパークを含むいろは親水公園の遊具は幼児向けばかりで小学生などが遊べるものが少ない。新河岸川の浅瀬に保護柵を設けて小学生などが川遊びできるようにするとか、河川敷に新河岸川の水を汲み上げてじゃぶじゃぶ池とかどろんこ池のようなものを作ることはできないだろうかという声がありました
- 新河岸川沿いの桜の木が減ってきているので植樹などできないだろうかという声もありました
最後に
ワークショップはよくあるブレーンストーミングの形式で、4~5のグループに分かれ思ったことを付箋に書いて貼っていきながら意見を言う形式でした。グループごとに議事録があったり録音されているわけではない(多分)ので、単に付箋に意見書いて貼って終わるだけなのではないかと「これやって市はどう活かしてくれるんでしょうか?」と疑問を呈する参加者の方もいました。ワークショップの雰囲気をその場で絵にまとめるグラフィックレコーディングということをやるプロの方がいてきれいに書いてくれていましたが、話し合いの中身まで踏み込むものではありませんでした。各グループに市の若手職員も入っていたのでその人達が報告をまとめるのか、あるいは運営が付箋一枚一枚を分析するのか、それとも写真とグラフィックレコーディングだけ残して「市民の声を聞きました!」という形作りで終わるのか?後日報告書を送付してもらえるそうなので楽しみに待ちたいと思います
いずれにしろ日頃接点のない方々と出会い、短時間でも意見を交わせた事はとても有意義でした
あと、このワークショップの運営は民間企業に委託して行われていましたが、今の志木市役所はブレスト一つ自力では回せないのか?と率直に疑問に思いました