交通政策に関する基本方針の素案
志木市は8月1日に『交通政策に関する基本方針の素案』を発表し、8月31日まで素案に対する市民の意見を募集しています。8月10日にはこの素案に対する市民説明会があったので参加してきました。今回の素案の中でのもっとも大きなポイントはふれあい号の廃止ですが、第二福祉センターで行われた午前の説明会では高齢者の方から「ふれあい号を廃止しないでほしい」という切実な要望が強く出されていました
ふれあい号廃止
ふれあい号は停留所と市内の福祉施設を結ぶ無料の福祉バスです。行き先が福祉施設限定なので一般的な商業バスとは異なりますが福祉施設に行く人にとっては便利なものであり、第二福祉センターは交通の便が悪く利用者にとってはふれあい号は貴重な交通手段であったことから廃止の方針に対して強い反対意見が出されていました
突然の廃止宣言
説明会に参加した方からはふれあい号廃止がすでに決定事項のようになっていることについて、もっと事前に市民の意見を聞いてほしかった、いきなりの廃止方針はひどい、福祉政策の話なのに弱者を切り捨てるのかといった声があがっており、その切実な様子は利用者ではない私にも強く響きました
本当に必要なくなったのか?
市がふれあい号を廃止しようとする根拠は利用者が少なくなっているからということでしたが、いつそれを調べたのかと質問したところ、コロナ禍まっさかりの令和3年に1週間行ったということで、その結果では1便あたり5人程度しか乗車していなかったということでした。しかし令和4年には利用者は増加しているとも言っており、一番利用者が少ない時期にたった1週間調べただけのデータを根拠にしているのは政策立案の手法として大きな問題だと思いました。第二福祉センターの説明会では市側は利用者はほとんどいないかのように言い、参加者からはなくなったらとても困ると強い声があがり、両者の温度差がとても大きいと感じました。政府がコロナの分類を5類に移行し人々の外出がコロナ前に戻ってきている令和5年現在の利用者数をもう一度調べ直してみるべきではないかと強く思いました
志木市デマンド交通
市がふれあい号廃止の代替としたのが志木市デマンド交通の拡充ということでした。志木市デマンド交通とは高齢者・障がい者・要介護者・妊婦などが割引料金でタクシーを利用できる制度(乗降場所は自宅か市指定の共通乗降場に限定される)で、料金はタクシー料金に応じて段階的に300円・500円・1000円となります
どの程度の拡充なのか?
素案にも「拡充」と書いてありますが、その内容は予算の都合もあるのでまだ具体的には言えないという説明でしたが、3段階目の料金が1000円というのは高すぎるのではないか、いつもは500円で済んでいたコースが渋滞等のせいで2倍の1000円になってしまうことなどがあるのをなんとかしたいというような話しがされており、多少は安くなるかもしれませんが、タクシーを利用する以上はやはりそれなりに料金がかかるのは避けられず、拡充といっても大きな期待はできそうもないように聞こえました
ふれあい号は無料だったのに
説明会ではふれあい号なら無料だったのに福祉施設に行くためにデマンド交通の料金を負担するのは苦しいという声があがっていました。いままでは無料だったのが往復1000円以上もかかるとしたら気軽には行けなくなる方もいるでしょう。ふれあい号の廃止が高齢者の貴重な憩いの場を奪ってしまうことになるとしたら残念なことです
そもそも無料交通手段の代替が有料交通手段というのはおかしな話であり、これは代替ではなく単なる有料化にすぎないと思います(タクシーなので自宅送迎というメリットはあるにしても有料化であることには変わりない)。あくまでもふれあい号を廃止するならふれあい号と同じ行き先限定のデマンド交通無料券を配布するなどの救済措置が必要なのではないでしょうか?
高齢者は増えているのに
今回の説明会を聞いていて疑問に思ったのは志木市では人口は微増傾向が続き高齢者人口も増加しているのに、なぜふれあい号の利用者数が最盛期よりも減っているのか(市の主張によれば令和4年でも半減)という点です。ふれあい号は福祉施設限定の無料交通手段ですからその利用者が減るということは福祉施設の利用者も減っているということなのでしょうか?だとすると志木市の福祉施設のあり方自体を見つめ直す必要もあるのかもしれません。このあたりについては私もまだよくわかっていないので今後いろいろ調べていきたいと思います