志木2中学校区合併問題のまとめ

志木市長選(6月15日投票)が近づいてきましたが、その重要な争点の1つである志木2中学校区の合併問題について、このブログでも再三とりあげてきましたが、新しいデータもそえて、改めてまとめておきたいと思います

2種類の小中一貫教育

現在志木市教育委員会は、旧来の小中学校バラバラの教育体制ではなく、義務教育9年間の一貫性をはかるためとして小中一貫教育を推進しています。それ自体は結構なことですが、問題はその具体化の方法が2種類あり、志木2中学校区だけは2小・4小・2中の3校を合併し、児童生徒数1300人規模の9年制のマンモス義務教育学校とし、他の3学校区は従来の小学校2校と中学校1校の6−3制のままで3校の連携を強めるとしていることです

そして、なぜ志木2中学校区だけ合併しなければならないのか?なぜ他の3学校区と同じ形式の6−3制の小中一貫教育ではいけないのか?というもっとも基本的な疑問にすら教育委員会はまともに答えておらず、そのことが多くの市民の不安と反対の世論を高めています

教育委員会や一部の議員は反対する市民があたかも小中一貫教育に反対しているかのように言いますが、多くの市民が反対しているのは小中一貫教育自体ではなく、志木2中学校区だけが合併されてマンモス義務教育学校にされるという点にあります

また教育委員会が言う様々な利点は6-3制の小中一貫教育でも可能な小中一貫教育共通の利点であり、義務教育学校固有の利点、ましてやマンモス義務教育学校の利点ではないことにも注意が必要だと思います

なんの必然性もない3校合併

今、全国では9年制の義務教育学校が少しずつ増えていますが、それらの多くは過疎地でのことです。上のグラフは文部科学省発表の令和6年度のデータに志木2中学校区の令和7年度のデータなどを加筆したものですが、全国の義務教育学校の約50%が9学年で199人以下(志木2中の半分以下)、約62%が9学年で17学級以下の小規模校です。また20.7%が9学年で49人以下、16.8%が9学年で8学級以下で空白学年があります。これらの地域では児童生徒数の減少と財政的な理由により従来の小中学校別々の体制維持が困難となり、それでも地域の義務教育を維持するために小中合併を行わざるを得なかったのです。一方、一部の都市では過密化による児童生徒数の急増と用地確保の難しさから巨大なマンモス義務教育学校が作られる例もあり、例えばおとなりのさいたま市では武蔵浦和学園という3600人規模の異常な超巨大マンモス義務教育学校の建設計画に市民の反対が高まっています

しかし、志木市の場合は上記のいずれにもあてはまりません。志木市の人口は全体としては微増傾向、志木2中学校区の館地域では若干の減少傾向だそうですが、それでも児童生徒が急減して空白学年ができそうなどということはなく、令和7年度でも2小20学級487人、4小16学級396人、2中14学級401人もの児童生徒が通っています。また、すでに立派な校舎が3つあるわけですから用地確保困難などの問題も存在しません

つまり志木2中学校区においては3校合併しなければならない必然性は何1つないのです。教育長はこの点についてまともに説明できず、「3校が隣接しているのは全国でも珍しいから」などという趣旨のことを言っていましたが、なぜ隣接していると合併しなければならないのか意味不明です。大きな「教育改革」を行ったという自分の「実績」を作りたくて、ちょうど隣接していて合併しやすいからやってみたいと言っているだけに聞こえます

9年制は6−3制より優れているのか?

教育委員会が高まる反対世論を鎮めたければ9年制は6−3制より優れているということを実例をもって証明すれば簡単です。しかしそれは不可能。教育は6−3制を9年制に変えれば劇的に良くなるというような甘いものではありません。実際、上述のようにすでに全国には9年制の義務教育学校が作られていますが、それらの多くで6-3制とくらべて学力が著しく向上したとか、いじめや不登校が激減したなどの目覚ましい教育成果が上がっているなどという事実はなく(もしあるなら国策として全国の小中学校を9年制にしていくべきです)、9年制が特に優れているなどということはないのです。この点については文部科学省が発行している『小中一貫した教育課程の編成・実施に関する手引』においても、「小中一貫教育に取り組む場合に、必ずしも義務教育学校や施設一体型の学校を目指そうとする必要はありません」(P24)とはっきり明記されています(『志木2中学区合併問題に高まる市民の反対の声 その2』参照)

また9年制では小学校6年生の最高学年としてリーダーの自覚を養う機会がなくなってしまうこと、子どもたちの人生の節目としての小学校の卒業式と中学校の入学式がなくなってしまうことなどが大きな欠点であるとの指摘もあります

志木2中学校区合併計画の異常性

わざわざマンモス校をつくる愚

学校教育においてその学校の規模は非常に重要であり、文部科学省は小中学校の標準規模を12〜18学級としています。令和7年度の志木2中学校区では3校の学級数は2小20、4小16、2中14で2小が2学級オーバーしていますが大きく逸脱はしていません。しかしこれを合併すると単純合計で50学級となり、文部科学省が定める義務教育学校の標準規模の18〜27学級を大きく逸脱してしまいます。また児童生徒数も合計1284人となり、1000人を越える義務教育学校は全国でも5.2%しかありません(上図参照)

教育委員会は現代では人々の価値観・生活様式・家族形態などが多様化しており、それに対応すべく児童生徒一人ひとりの実情にあった新しい時代の教育を行うためには小中一貫教育が適切であると言っており、それ自体は結構ですが、その理想とわざわざ標準規模の学校をマンモス校に再編することの矛盾を説明できません。教育委員会は昔は志木でもマンモス校が普通だったので問題ないなどと強弁していますが、マンモス校が多様性の時代の新しい教育にふさわしいなどと考えているとしたらその見識を疑わざるを得ません。知らない子や話したこともない先生の方が多く、個が埋没していくような環境をわざわざつくるのは愚の骨頂です

全国の義務教育学校の中には9学年が一堂に会して一緒に給食を食べる食堂がある学校や、運動会で9学年全員で地域の伝統舞踊を踊ったりする学校もあり、1年生から9年生までが、アットホームな雰囲気の中、学年をこえて和気あいあいと仲良く学んでいる例もあります。しかしそれらは上図にあるような小規模な義務教育学校の例であり、ともに義務教育学校だからというだけで9学年で200人にも満たない学校と1300人規模の学校を同列に扱うことはできません。マンモス校ではこのような義務教育学校固有の利点とされる効果も十分に発揮することはできないでしょう

3校舎あるのに2校舎に子どもたちを詰め込む愚

この計画のもう1つの異常さは、せっかく3つ校舎があるのにわざわざ2校舎に子どもたちを詰め込むことです。これは合併して1つの学校になったという一体感を演出するために、2小と2中校舎を渡り廊下で結んで1校舎の体裁を作ろうとする結果ですが(『志木市教育委員会の行き当たりばったり狂想曲』参照)、残った4小校舎の使い道はいつまでたっても決まりません。せっかく広々としたゆとりある3校舎体制が可能なのに、わざわざ2校舎に子どもたちを詰め込むのは愚かとしか言いようがありません

小学校同士の合併で1学級あたりの実児童数を増やしてしまう愚

またこの計画では2小と4小が合併されますが、小学校同士を合併すると1学級あたりの実児童数が増え先生の数も減ってしまいます。私はこれがこの合併計画の非常に大きな問題点であると考えます。教育委員会は法令上の学級定員(35名)は変わらないと繰り返して論点をそらすことに躍起になっていますが、問題なのは上限を意味する学級定員ではなく、実際の1クラスあたりの児童数が増えてしまうということです(『志木市教育委員会の不誠実な珍問答』参照)。よりよい教育環境をめざすなら6−3制か9年制かという以前に、少人数教育の推進こそが求められるはずなのに、それに逆行する愚策がこの合併計画です

あまりにも不誠実な志木市教育委員会の姿勢

志木2中学校区合併問題に反対の世論が高まっている背景には、上述のようなその内容の問題と同時に志木市教育委員会のあまりにも不誠実な姿勢があります

なぜ市民アンケートをとらないのか?

この計画が明るみに出た当初から市民の間からはその賛否を問う市民アンケートの実施を求める声がありました。これほど大規模な学校の再編を行おうとするのであれば、まず市民の声に真摯に耳を傾けるのは当然のことです。しかし教育委員会は頑としてこれを拒否したままであり、このような民主主義に反する姿勢に対して市民の不信感が高まっています。なぜ賛否を問うアンケートをとらないのか?反対多数の結果が出ることを教育委員会自身がよくわかっているからなのではないでしょうか?

白紙だらけのパブリックコメント返信

また志木市小中一貫教育推進計画の素案に対するパブリックコメント(パブコメ)への教育委員会の返信は、実に44ページ中26ページ(59%)が白紙というひどいものでした。行政手続き上、計画素案についてはパブコメを行ったうえで決定しなければならないので実施せざるを得なかったが、反対意見が多かったのでまともに返信すらせず、パブコメ実施の体裁だけ作ったというのがありありです。教育に対し多くの市民がそれぞれの想いをもって送った意見にまともに答えようともしない不誠実極まりない態度に失望や怒りを覚えた市民も多かったのではないでしょうか?

鈴木潔議員の暴言

こうした不誠実な教育委員会への批判の高まりに対して、自民党の鈴木潔議員が市議会で市民を中傷する発言を行いました。その内容は「教育委員会が何回も何回もですね、どんなに丁寧に説明しても」「一向に理解を示そうとせず」「一方的に反対だけを繰り返し」などというものでしたが、これはとんでもない言いがかりであり、上記のように教育委員会は少しも丁寧な説明などしていません

志木市の教育全体の問題

市民不在で行き当たりばったりの「教育改革」

志木2中学校区合併問題では教育長の独断と迷走も目につきます。上述のように市民の意見を聞こうとしない専横ぶりに加え、当初は4小と2中校舎を使うと言っていたものがいつのまにか2小と2中校舎に変わったり、両校舎を空中渡り廊下でつなぐと言っていたものが地上渡り廊下に変わったり、行き当たりばったりに迷走しています。こういうことを許しておくと志木2中学校区にとどまらず、志木市の教育全体に独断と迷走が広がっていくことが強く懸念されます

過大規模校となっている志木小学校はほったらかし?

文部科学省は小学校の標準規模を12〜18学級とし、これを大きく上回る31学級以上を過大規模校と定義し、その解消を目指す取り組みを各自治体に求めています。現在志木市では志木小学校が33学級945名(令和7年度)の過大規模校となっていますが、志木市教育委員会はこれを放置したままなんらの対策も行おうとしていません。一方で志木2中学校区を1300人規模のマンモス校にしてかまわないと強弁しているわけですから、志木小学校の過大規模化に手当をすれば不公平になってしまいます。また志木2中学校区の問題に手一杯で志木小学校にまで手が回らないということもあるのかもしれません。このように志木2中学校区のいびつな「教育改革」はすでに他の学校区にも悪影響をおよぼし始めています

他の学校区の予算は十分なのか?

志木2中学校区の合併計画にあたっては、非常に杜撰な基本設計なるものが公表されました(『志木市教育委員会の行き当たりばったり狂想曲』)が、その設計だけで数千万円の予算が使われました。そして実際に工事をすると今度は数億円の予算が使われることになります。志木2中学校区にばかり予算がつぎこまれるわけですが他の学校区は予算が足りているのでしょうか?志木2中学校区では市民が反対しているのに予算がつぎこまれ、他の学校区では本当に必要としているのに予算が回らないという皮肉な事態になってはいないでしょうか?

最後に

志木2中学校区は児童生徒急減で空白学年ができそうな過疎地でもなけば、児童生徒急増で学校新設が急務だが用地がない状況などでもありません。すでに3つの校舎があり、それらがほぼ標準規模の学校として日々教育活動にいそしんでいます。なぜこれを合併してマンモス義務教育学校に再編し、児童生徒を2校舎に詰め込まなければならないのか?そんな必要性はどこにもありません。マンモス義務教育学校にしたら学力が向上するのか?いじめや不登校が減るのか?そんな保証もどこにもありません。問題がおきても1300人の中に埋もれて見えなくなるだけかもしれません。教育の基本は児童生徒一人ひとりの個に応じたキメ細かい思いやりのある指導であり、それをやりやすいのはマンモス義務教育学校ではなく標準規模の学校です。目先の「改革」の成果を求めるのではなく、地に足のついた地道な教育改革こそが必要であり、こんな愚かな計画はきっぱりと中止し、志木2中学校区も他の3学校区同様に小中3校体制のもとで連携を深める小中一貫教育にするべきです

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