志木市福祉課は元警察官に生活保護受給者を尾行させている

元警察官による生活保護受給者の尾行

ポストに入っていた共産党の議会報告に気になる記事がありました。生活保護者に対する元警官による尾行問題という記事です

Twitterでも話題になってました

https://twitter.com/hellkult/status/1387282638759550993

Twitterの方には赤旗本誌の記事が出ていますが、これらから概略をまとめると以下になります

  • 生活保護受給者の女性が黒い車に乗った二人の男性に尾行された、何度も尾行されていて怖い、と共産党市議に相談
  • 志木市は数年前から福祉課の臨時職員に元警察官を採用して尾行などをさせている
  • 市の担当者は尾行を認めた上で正当だと主張

自分が住んでいる街でこんなことが行われているとは正直驚きましたが、調べてみると以下のような資料も見つかりました。以下は志木市のHPで公開されている募集職種及び勤務条件一覧表.pdfという2020年12月1日付の文書からの抜粋です。募集職種「14 生活保護支援相談員」の2番目で勤務内容が「生活保護に関する行政対象暴力への対応、不正受給案件の調査」、要件で「警察官OBで、基本的なパソコンの操作ができる人」として警察官OB限定での募集であることが明記されています

他の市町村でも行われているのか?

こういうことは他の市町村でも行われているのでしょうか?ネットで検索してみるとおとなりのさいたま市でも行われているようです

以下はさいたま市のHPの生活保護費の不正受給防止対策に取り組んでいますというページからの抜粋です。さいたま市独自のとりくみとして警察官OBを福祉事務所等に配置していることが明記されています(2021年5月8日現在)

しかし、もちろんすべての市町村で行われているわけではなく、ちょっと古いですが、以下の資料では元警察官の窓口への配置についての調査で元警察官を採用していると読み取れるのは54市中9市ほどでした

つまり志木市だけがというわけではないが、どこでもやっているというわけでもなく(やってる方が少ない)、要はその市の市長や市議会の政策次第ということだと思われます。志木市の香川武文現市長は志木市の生活保護行政には元警察官を採用することが必要だという政策なのでしょう

尾行の目的は?

ところで、なぜ今回の記事では女性は尾行に気づくことができたのでしょうか?私はこの手の尾行には2種類の目的があると考えます

不正受給の調査のための尾行
 募集時の勤務内容にも「不正受給案件の調査」と書かれていますし、市議からの抗議に対して市の担当者が尾行を正当化する理由としてもこれを主張するのでしょう。そして調査のためにはプロの捜査技術が必要だから元警察官限定で採用という理屈になるのだと思いますが、ではなんで尾行がバレたのでしょうか?この元警察官は尾行がヘタクソだったんでしょうか?だとしたら元警察官限定で採用した意味がありませんね

・いやがらせのためにわざと気づかせる尾行
 記事では「何度も尾行されていて怖い」とありますが、プロの捜査官が本気で身辺調査(尾行・張り込み・超望遠カメラ等)したら、一般人はそうそう気づくことはできないでしょう(気づかれたら逃亡や証拠隠滅されてしまう)。今回のように車に乗って家に入るまでついてくるなどというのは、わざわざ尾行してますよと伝えているようなものです。それを何度も繰り返すのは、相手に精神的プレッシャーや恐怖感を与えて生活保護を辞退するように仕向けるため、いやがらせのための尾行なのではないかと思えます。これはストーカー規制法違反になる可能性がありますが、元警察官なら、どこまでやると警察が被害届を受理するか、その線引がわかっているのでギリギリの線で繰り返す、あるいはOBならある程度内部に顔が効くので…ということもあるのかもしれません

水際作戦のさらにその先でのしめつけ

財政赤字を理由に政府が福祉切り捨てを進めるなか、生活保護行政を担う各自治体においても、市民が生活保護申請に来ても窓口であれやこれや難癖をつけて追い返す(申請書すら渡さなかったりする)、いわゆる水際作戦が横行していると言われています。ということは、逆に言えば、現在生活保護を認められている人々は水際作戦では追い返せなかった、生活保護を受けるにたる十分な理由があると認めざるを得なかった人々だということになります。そういう正当な権利を持つ人々に自ら権利を放棄させるためのいやがらせ、水際作戦のさらにその先でのしめつけの1つが今回の尾行事件なのではないかと思えてなりません。他市では児童扶養手当受給者に対する下記のような事件もおきているようですが、こんな非人道的な行為が福祉行政の名のもとに行われるなど許されていいはずがありません

朝日新聞デジタル

 高松市の男性職員が昨年、児童扶養手当の受給資格を確認するため、夜間に母子が暮らす部屋に1人で入り、タンスの中を個人のス…

日本国憲法第25条を守ろう

日本国憲法は第25条において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と明記しています。私はこの生存権を定めた25条は平和主義を定めた9条と並んで日本の宝だと思っています。25条については単に「最低限度」ではなく「健康で文化的な最低限度」としている点が本当に素晴らしい。「最低限度」だけなら単に生物としての命が続いていればいいとなりますが、「健康で文化的な最低限度」とすることで、すべての国民に人間らしい暮らしを保障しようということになる素晴らしい条文だと思っています。生活保護についてはその締め付けと並行して不正受給が喧伝され、生活保護受給者すべてを悪者扱いし、萎縮させるような雰囲気が作られてきていることに強い違和感を覚えます。先進国だ経済大国だといいながら、その一方で格差がどんどん広がり、ホームレスになる人達が増え、子どもたちにも貧困がおよんでいる現在の日本、生活保護は経済的に苦しむ人達を守る最後のセーフティネット(安全網)、この安全網がどんどん破れほころびて行く現状を憂うばかりです。社会的弱者に冷たい国、この国を豊かだと言えるでしょうか?

では不正受給の問題はどうでもいいのかと言えばもちろんそんなことはありません。上にあげた『警察官OBの生活保護申請窓口等への配置はやめてください』の中で豊川市が以下のような回答をしています

生活保護の不正受給対策として、退職した警察官OBを窓口等へ配置している自治体もあるようですが、今のところ、豊川市では配置の計画はありません。悪質な不正等が疑われるケースについては、個別に所管の警察署と連携を図ればよいと考えております。

まったくその通りでしごくまっとうな考え方だと思います。違法が疑われるのであればその都度警察と協力すればいいだけです。警察も自治体からの正式な要請であればきちんと対応するはずですし、なにもOBを使って違法スレスレのことをやるのではなく、現役の警察官に適法に対応してもらえばいい、それが法治国家の原則です。それができずに露骨な尾行を繰り返すのだとしたら、それはやはり「調査」に名を借りた「いやがらせ」ということになると思います

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>今井あさと

今井あさと

埼玉県志木市在住。敷島神社の近くに住んでます。27年間ほど都内の私立高校で非常勤講師をした後にフリーランスのプログラマを経て現在はほぼ休業中。非正規一筋の人生です(笑

非常勤講師で教えていたのは公民科(政治経済・現代社会・倫理など)。今でも政治や社会に強い関心があり、志木市の政治についても詳しく見てみようと思いこのようなブログを立ち上げました

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