志木2中学校区の3校合併の条例可決
2026年(令和8年)3月、志木市議会において「志木市立学校設置条例等の一部を改正する条例」が賛成多数で可決され、志木2中学校区の3校(2小・4小・2中)を合併して志木の森学園という9年制の義務教育学校にすることが決まりました。私はかねてからこの合併には強い疑問をもち、このブログでもその問題点を指摘してきましたが、条例可決をうけて改めてその問題点をまとめておきたいと思います
わざわざマンモス校化することが教育改革なのか?
マンモス校
この合併の最大の問題点はこれが1300人規模のマンモス校になるということです。志木市教育委員会(以下、市教委)は小中一貫教育のための合併であるとくり返し、そのメリットばかり強調しますが、一方でマンモス校のデメリットについては無視し続けてきました
教育長のおかしな議会答弁
たとえば教育長は令和6年3月定例会での答弁で、ある義務教育学校の校長から聞いた話として、以下のようなエピソードを語っています(以下議会議事録からの引用)
1年から9年までの運動会で、1年生、低学年の子が運動会で走っている途中で止まってしまった、突然走らなくなってしまった。先生が駆け寄ろうとしたときに、その前に上級生が駆け寄って、その子どもの面倒を見た。どうしたのと優しく声をかけてくれたと。その上級生に先生が聞いたら、どうしてそういうことをしたんだと。いや、私が小さい頃も同じようなことを上級生にされたからということで、上級生が下級生をいたわる心、人間性というのが育まれているんではないかなと思います。
なるほど心温まるエピソードです。しかしこれは1300人のマンモス校にあてはまるでしょうか?3校合併するとグラウンドは3つになりますが、その1つに1年生から9年生まで1300人を詰め込んで運動会をやるのか?だとすると一人一人の子どもたちの出場機会はとても少ないものになってしまいます?そうではなく2または3のグラウンドにわけて実施すれば9年制の一体感は乏しいものになってしまうし教育長の言うエピソードのようなことは前提からありえなくなります
別項「志木2中学校区合併問題のまとめ」でも詳しく書きましたが、全国の義務教育学校の約50%は9学年で199人以下の小規模校(文部科学省・令和6年度学校基本調査)であり、その多くは地方の過疎化対策として作られています。9年制義務教育学校で1年生から9年生までが和気あいあいと過ごしているような学校は、小規模校で日頃から互いに顔見知りであることや地方ではまだまだ地縁が強く学校外でも結びつきがあるなどの背景があるのであり、これがそのまま1300人規模のマンモス校に当てはまるかのように語ることは乱暴で不誠実な議論であると思います
教育長は上記答弁でもその学校の規模にふれていませんが、マンモス校での話でないことは明らかでしょう。私は上記答弁の時も含めて何度も議会(本会議や常任委員会)を傍聴にいきましたが、市教委が義務教育学校の好例を語る時にその学校の規模にふれたことは一度もありませんでした。全校生徒199人以下の学校と1300人規模の学校を同列に扱えるはずもないことは百も承知であるはずなのに、あえてそれを避けて9年制義務教育学校のメリットだけを強調してきた姿勢は教育を司る者として極めて不誠実であったと思います
マンモス義務教育学校が小中一貫教育の基本形?
また市教委は9年制義務教育学校が小中一貫教育の「基本形である」と言いますが、全校生徒1000人以上のマンモス義務教育学校は全国に5.2%(文部科学省・令和6年度学校基本調査)しかありません。また文部科学省は義務教育学校の適性規模は18学級以上27学級以下であるとしているのに対し、志木2中学校区の合併では43学級(市教委発表・令和7年時点見込み)になるとのことで、わざわざ文部科学省の言う適正規模=基本形を大きく逸脱した学校を作ろうとしている点でも異常であると言わざるを得ません
小学校同士を合併すると1学級あたりの実児童数が増える
さらにこのブログでも何度も指摘してきました(別項「志木市教育委員会の不誠実な珍問答」参照)が、この合併では2小と4小の小学校同士が合併されますが、これにより前期課程(6−3制の小学生のこと)の1学級あたりの実児童数(定員の35ではなく実際の数)は合併前よりも増えることになります。これは合併前と比べて教育環境の悪化であり、非常に重要な問題だと思います
やる必要のない合併
現在、都市部でも一部にマンモス義務教育学校が作られている例もありますが、それらは人口増加や用地確保の困難さが背景にあることは明らかです。しかし志木市2中学校区の場合はすでに普通に機能している3校をあえて合併しようとしているわけで、合併しなければならない必然性はどこにもありません。小中一貫教育は9年制ではなく6−3制のままでも十分に可能です。このことは市教委自身が市内の他の3学校区は今までどおり6−3制のままで小中一貫教育を進めようとしていることを見ても明らかです
6年生へのケア
中1ギャップ
市教委はこの合併推進の錦の御旗として当初は中1ギャップの解消ということをくり返していました。しかし国立教育政策研究所が『「中1ギャップ」の真実』というリーフレットの中で、そもそも中1ギャップという言葉自体根拠が薄弱でいじめや不登校の実態を見誤らせるものであり『「中 1 ギャップ」に限らず、便利な用語を安易に用いることで思考を停止し、根拠を確認しないままの議論を進めたり広めたりしてはならない。』と警告しているとおり、この言葉自体が根拠薄弱であることを市民から指摘されてトーンダウンしてきました
確かに小学生から中学生への移行に困難を抱える子が出ることも事実ですが、一方でこれを成長のための重要な1ステップとする子も多数いるわけで、重要なことは困難を抱える子をいかにケアしていくかということであり、十把一絡げに小→中への移行をすべてなくせばいいというのは乱暴な考え方ではないでしょうか?長い人生の中では様々な転換点があり、人はそこで多かれ少なかれ不安や困難に直面しながら、それに自分なりの折り合いをつけて適応していくわけで、小→中への移行はその貴重な訓練の場であると思います
小学6年生は最高学年としての自覚を養う貴重な機会
6−3制の場合、小学6年生は子どもたちが最高学年という立場を自覚できる人生最初の機会であり貴重な成長の機会です。しかし9年制では6年生は5年生や7年生になるのと同じ単なる通過点に過ぎなくなります。このことが子どもたちの成長にとってどのような影響をあたえるのか、特に個が埋没しやすいマンモス校ではどうなるのか、しっかり見守っていく必要があると思います
小学校の卒業式と中学校の入学式が消滅
9年制では小学校の卒業や中学校の入学ということがありませんので、その節目の卒業式も入学式もあり得ません。これに対し市教委は「相当する儀式を行う」とくり返してきましたが、合併が決まった現在においても未だにそれが何なのか具体的に説明できないままです。そもそも卒業・入学がないのにそれに相当する儀式?ないものに相当する儀式というのはとても珍妙な話です。おそらく前期課程修了式といった行事でお茶を濁すことになりそうですが、こういう重要なことにきちんとした方針を示さず、開校後の現場任せにする市教委の姿勢には強い疑問を感じます
いびつな学年配置
今回の志木2中学校区の合併では1〜5年生が2小校舎、6〜9年生が2中校舎に配置される予定です。6年生の子たちが成長期を迎えて体つきも大きく違い、制服も着ていて見かけも大きく違う中学生(7〜9年生)に囲まれて萎縮してしまわないか?6−3制なら最高学年になるのに、それと大きく異なる状況になることの影響が心配です
なおこの合併では市教委は9年間を4-3-2制に区切って学年の節目とするとしていますが、校舎は5−4制ということになり、4-3-2制との整合性をとるために現場の苦労が増える心配もあります
小中一貫教育というけれど
旧来は小学校と中学校が自己完結して両者は断絶していましたが、そうではなく、両者が連携して教育を進めようという小中一貫教育自体には私も大賛成ですし反対する人はあまりいないのではないかと思います。しかし、これは6−3制のままでも十分に実現可能なことは他の3学校区の6-3制を維持しようとしていることで市教委自身が認めていることですし、合併が必須なわけでもないことはここまで述べてきたとおりですが、その他にも日本の小中一貫教育を論じるうえでは重要な論点があります
そもそも学習指導要領は6−3制のまま
日本の学校教育の基準を定めた学習指導要領は現在でも6−3制のままです。義務教育学校は9年制といっても教育課程は小学校学習指導要領に基づく前期(6年)と中学校学習指導要領に基づく後期(3年)という6-3制になっており、教科書等も6-3制と同じです。ただしまったく同じというわけではなく、前後期の間で一定の指導内容の入れ替えなどは可能ですが毎年生徒の転出入がある公立校では大きく変えることはできません。もしも6-3制とガラッとカリキュラムを変えてしまうと転出入した子どもたちの学習に大きな障害が生じかねないからです
教員免許も6-3制
また、日本の教員免許は小学校と中学校で別々であり、小学校は教育学部、中学校は専門教科別の学部(国語なら文学部、社会なら経済学部や法学部など)がある大学で履修する必要があります。義務教育学校に勤めるためには両方の免許が必要になりますが、そのためには大学卒業後に通信制大学に編入・認定試験受験・両方の免許取得可能な制度がある大学に行くなどが必要になります。そのため両方の免許をもっている人材はまだまだ十分とはいえず、市教委に尋ねたところ、志木市の場合、今回の義務教育学校では両方の免許を持つ教員は4割程度になる見込みとのことでした。本来義務教育学校の教員は小中両方の免許を持っていなければなりません。現在は法律上の特例措置として片方の免許だけでも採用可能だが、学級担任は該当免許がある学年しかやれません。つまり、志木市の場合、慎重なケアが求められる6年生から7年生の転換点で持ち上がれる先生は4割以下ということになり、市教委がいう9年制のメリットは十分には機能しないのではないかと思われます
人材確保への不安
近年、教員のなり手不足や質の低下などが報じられており、志木市では独自に続けてきたハタザクラ教員(市費採用による教員増員)制度も質の低下を理由に廃止してしまった歴史もあります。従来の6-3制でも人材難がおきている流れの中、あえて小中両方の免許を取得して9年制の義務教育学校で教壇に立ちたいという意欲と能力を持った人材がどれだけ確保できるのか?人材確保は6-3制以上に難しくなるのではないかという心配もあります
4小校舎の使い道は未だに未定
3校合併の条例は可決し、2小と2中校舎に3校舎分の児童生徒を詰め込むことになりましたが、空いた4小校舎の使い道は未定のままです。先日市教委が開催した「志木の森学園の施設概要に関する地域説明会」に行ってきましたが、そこでの説明では自習室に活用などの案もあるが子どもたちの校舎間の移動の引率や自習室に配置する大人の確保などの課題もあり簡単にはいかないようです
教育サポートセンター分室
その中で唯一教育サポートセンター分室の設置は確実になりつつあるそうです。これは今までは宗岡地区にしかなかったものを市の反対側にも設置するということでしたが、本来こういうものは市内4学校区それぞれに設置すべきものではないでしょうか?志木2中学校区だけマンモス校化して空き校舎を作りそこに設置というのでは2中学校区だけに負担を押し付けていることになると思います
教育長は何を恐れているのか?
教育長と押し問答の一幕
先日市教委が開催した「志木の森学園の施設概要に関する地域説明会」、私は午前の部に参加し30名弱が集まっていました。教育長が進行を務め市教委による説明の後、質疑応答の時間が設けられました。市教委の面々の他、2小・4小・2中の校長先生も出席していたので、私は「この改革が不登校を減らすのに役立つ・いじめを減らすのに役立つ・子どもたちの学力を底上げするのに役立つという実感があるか校長先生に現場の声を伺いたい」という趣旨の質問をしました。すると教育長が色をなして「質問は自由だが誰が答えるかはこちらが決めます」と言って市教委のメンバーに答えさせようとしたので私が現場の声が聞きたいと言うと教育長は拒否の態度でちょっとした押し問答になってしまいました。結局一人の校長先生が挙手して答えてくれたのですが、終わると教育長は「では次の質問に…」と打ち切ろうとし、私が「3人全員の答えを聞きたい」、教育長が嫌がるでまたちょっとした押し問答のあげく別の校長先生が挙手して答えてくれて最終的に3人全員が答えてくれました
校長先生たちの回答は誠実さを感じさせてくれるものではありましたが、私の「不登校やいじめを減らすのに役立つか?学力を上げるのに役立つか?」という問いに直接答えてくれるものではなく、マンモス校化への懸念を払拭してくれたり、予算を何億円も投じるほどの価値があると思わせてくれるようなものではありませんでした
この改革の本質?
私はこの一件で本当に驚きました。そもそも説明会に校長たちを呼んだのは主催者の市教委であるはずなのに、質問したら答えさせたがらない。説明会の性質上呼ばざるを得なかったが自由に話されては困る事情でもあったのでしょうか?私の質問は要は「この改革は役立つか?」と聞いたわけですが、もしかしたら校長がネガティブな回答をするかもしれないという恐怖が教育長の頭をよぎりでもしたのでしょうか?この改革が現場からの声に応えたもの、現場との十分なコミュニケーションの上で進められたものであったとしたらそんな不安はおきようはずもないわけで、あの場での教育長の興奮した拒否の態度は図らずもこの改革の本質が教育長の独断専行によるものであるということを垣間見せるものだったように感じました