いろは親水公園リニューアル検証-その1

志木市のランドマークとしてのいろは親水公園

昨年9月に行われたいろは親水公園リニューアル事業の工事説明会において、市はここが「本市の新たなランドマークとなる」ことを目指して事業を行うと言っていました。ランドマークとは「その地域を特徴づけ、目印となる物」の意ですので、市にとってここは単なる公園ではなく市長の市政に対する基本姿勢を象徴する公園であるということになります。リニューアル後約一ヶ月が経ち開園直後の喧騒も収まってきましたので改めてこのランドマークを見てみたいと思います

中洲のバリアフリーについて

中洲の入り口は広々と開かれた開放的なものになりました
しかし、ここを逆側からみると石畳ごとに段差があります
それぞれ10cm程度の段差です。健常者が歩く分には問題ありませんが車椅子で通るのは困難でしょう。また手押しのカートを使う高齢者にもこの段差はきついようで、私が見ていた時も一人の高齢者の方は段を上がろうとするたびにカートがつかえて難儀しておられましたし、別の高齢者の方は入り口に進もうとした時点で段差があることに気づき入るのをやめて踵を返していきました。車椅子用のスロープはリニューアル前からのものが向かって左側に残っていますが弱者にわざわざ端へ回れというのは随分冷たい感じがしました。また、この入り口には点字ブロックがありません

点字ブロックは向かって右側のベーカリーの裏手に設置されていますが駐輪場も設置されているために止めきれないとこのようにあふれてしまいます。この写真の場合白杖を使ってブロック上を歩くとスクータに接触してしまう危険があります。駐輪した方のマナーという面もあるでしょうが、そもそも設計の時点でこうなる可能性があることは十分予見できたはずです。またもしここであふれた自転車等に接触して転んでしまった場合もベーカリーの影で見えにくいため助けを求めても気づく人が少ないかもしれません。トイレに向かう場合、向かって右側から来た場合はこのルートが最短ではありますが、そうであれば駐輪場はここに作るべきではないし、作るのであれば、ほんの少し遠回りになっても安全を確保しやすい開けた中央の入り口に点字ブロックを設置すればこのような危険はおきないはずです

なぜ弱者に別の入り口へ回れと言うのか?

中央には開けた広い入り口を設けたのに弱者にはわざわざ右か左の別の入り口へ回れという作りはバリアフリーの考え方に反するものだと思います。バリアフリーというのは単にスロープや点字ブロックを設置しておけばいいというものではなく、障害者も健常者も境目なくシームレスに活動できるような街づくりだと思います。この中州の入り口の場合、段差は作らずスロープ状にするべきでした。接続する歩道と村山快哉堂との距離がかなりあるので使いやすい緩やかなスロープが作れたはずです。そして点字ブロックと手すりをつければより多くの市民が同じ入り口を使えるようになったはずです。老若男女を問わず車椅子を使う人もベビーカーを押す人もカートを使う高齢者も杖をつく人も保育園の幼児たちを乗せた手押し車も白杖を使う人もみんな等しく中央の広々とした同じ入り口から入って集うことができる、それこそが志木市のランドマークと呼ぶにふさわしい姿だと思います

バリアフリーより見た目を優先したのでは?

私はリニューアル後にこの中州に何度も足を運んでみて感じたのは「バリアフリーより見た目優先、デザイン優先」なのではないかということです

向かって左側のスロープについてせっかく以前から設置されていたので壊すのはもったいないという意見もあるかもしれません。しかし中洲のリニューアルにおいては別項にも書いたとおりたくさんあった樹木の大部分は伐採して丸坊主に近い状態、トイレや駐輪場や入り口などのコンクリート部分もほとんど解体して作り直したわけですからこのスロープだけを残す説明は成り立ちません

また、上の画像は工事説明会で市が提示した資料で、整備の主な視点の一つとして「死角のない空間の確保」があげられていますが、すでに書いたとおり点字ブロックを使う視覚障害者の方が駐輪場からあふれた自転車等にぶつかって転ぶ可能性がある場所がベーカリーの裏手になっていてこの公園唯一の死角になっています。「歩きやすい動線の確保」についても段差のせいで歩きにくくなっている人が出ています

この公園のデザイナーは中央入り口を車椅子や脚の弱い方なども通れるようにした場合に必要になる手すりや、点字ブロックをデザイン上邪魔なものと感じたので両側によけさせて、中央入り口を「スッキリ」した見た目にしたかったのかもしれません。あるいは市長からのオーダー自体がそういうものだったのかもしれません

私は上にも書いたように、志木市のランドマークを名乗るならすべての市民が分け隔てなく同じ入り口から入れるようなデザインを考えてほしかったと思います。そして、本当にバリアフリーをきちんと考え抜いたデザインであればそれはきっと美しいものになるのではないかと思います

やはりこの点字ブロックは危険

上のスクータが止まっていた時間から少し後の写真です。奥にあふれた自転車が2台、点字ブロックにかぶさらない配慮をした止め方になってはいますが、やはり危険だと思います

<2022/9/10 追記>

今日も危険な駐輪がありました。点字ブロックに重ならいように配慮しているかもしれませんが、実際にブロック上を歩いてみると腕が接触しあきらかに危険でした。先週と今週だけで3件ですからこれは「たまたま」とか「駐輪する人のマナーが」という問題ではなく設計上の問題です。上にも書きましたがここに駐輪場を作ればあふれた自転車がこのように止められることは容易に予見できたはずです。市はただちに対応するべきですので市長への手紙で連絡しておきました

<2022/9/17 追記>

上の3枚の写真を添えて市長への手紙で連絡し1週間たちました。事故がおきてからでは遅いので早急に対応すべきだと思いますが張り紙一枚でていませんでした。市長はこの問題に無関心なようです。志木市は面積では日本で6番目に小さい市ですが、その小ささを生かしてきめ細かくフットワークのよい行政を目指すというようなことを市長は言っていたような気がするのですが、市役所の目の前にある、市がランドマーク(市の象徴)とする公園でバリアフリーが壊れているのに無関心だとは残念なことです。これでは弱者に冷たい市長の政治姿勢の象徴という意味での負のランドマークになってしまいかねません

今日は点字ブロック上に3台も駐輪されていました。何度も書きますがベーカリーの周りに点字ブロックを作ればこうなることは容易に予見できたはずで、やはりこれは設計自体がまずいのだと思います。中央の広い入り口をスロープ状にして点字ブロックもそちらに作っていればこんなことにはならなかったはずです。見た目ばかりを優先して弱者をわきに追いやろうとした設計思想自体が問題なのだと思います。せっかくリニューアルして見た目はきれいになったがよく見ると弱者に冷たい、これが志木市のランドマークだとはなんとも残念でなりません

<2022/9/21 追記>

市長への手紙への返信が届きました

志木市長 香川武文です。

市長への手紙にてご意見いただきました件についてお答えいたします。

いろは親水公園の中洲ゾーンに位置する駐輪場の適切な利用につきましては、今井様のご指摘を踏まえ、飲食店従業員及び指定管理者による園内巡回時の危険箇所の確認をこれまで以上に徹底し、通行の妨げとなる駐輪を発見した場合には、駐輪場に移動させるなどの対応を適宜行ってまいります。

また、飲食店舗裏手の駐輪場が満車の場合は、県道沿いに設置した駐輪場へ誘導する案内を掲示するなどの対策を講じ、適切な利用につなげてまいります。

貴重なご意見ありがとうございました。

巡回監視強化と案内掲示という内容ですが、上の3台が点字ブロック上に置かれていた日に公園管理者にもあの写真を見せましたが自分が巡回した時にはなかったという回答でしたので巡回でどこまでカバーできるのか、飲食店従業員によるチェックにしてもその必要性が高まる時は来客が多い時なので店外にまで目が行き届くのか疑問です。この対策では事故の確率が多少下がるかもしれないというだけで根本的な安全策とは言えません。いっそ入り口の工事からやり直したらいかがかと思いますが、それをすると設計に欠陥があったという失政を認めることになるので今の市長が受け入れることはないでしょう。公園の見た目ばかりを重視してわきにおいやられたおざなりの点字ブロックにおざなりな危険防止策、不幸な事故がおきないことを願うばかりです

<2022/10/2 追記>

今日もまた点字ブロック上に2台駐輪されていました。市が設置した駐輪禁止の看板も監視強化も効果がなかったようです。この写真を撮った直後に高齢のご夫婦らしき方たちがこの自転車に乗って出ていかれましたが、果たしてこの人たちの「マナーが…、モラルが…」とばかり責められるでしょうか?自転車を使って買い物をする高齢者のできるだけ店の出入り口近くに止めたいという切実な気持ちも理解されるべきだと思います。それでもこの場所にしか点字ブロックを設置できないのであれば駐輪しないように粘り強く理解を求めるしかありませんが、すぐ横の中央入り口にはとても広いスペースがとってありそこに点字ブロックを設ければこんな問題はおきません。中央入り口は白い石畳と芝生の緑とのコントラストの綺麗な見た目、設計者はそこに点字ブロックの黄色い線が入ることを嫌ったのでしょうか?この設計者にはバリアフリー時代の都市公園を設計するセンスも能力もないと思います
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>今井あさと

今井あさと

埼玉県志木市在住。敷島神社の近くに住んでます。27年間ほど都内の私立高校で非常勤講師をした後にフリーランスのプログラマを経て現在はほぼ休業中。非正規一筋の人生です(笑

非常勤講師で教えていたのは公民科(政治経済・現代社会・倫理など)。今でも政治や社会に強い関心があり、志木市の政治についても詳しく見てみようと思いこのようなブログを立ち上げました

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