合併をともなう義務教育学校化の問題点2

志木市小中一貫教育リーフレット

志木市のHPに『志木市小中一貫教育リーフレット(令和5年7月15日作成版)』というものが掲載されており、この中でこのブログでも取り上げてきた1クラスの人数の問題が以下のように説明されていました。しかしこの説明は非常に問題があると思います。そもそもこのリーフレットの以下の部分は現在志木市が計画している義務教育学校化について説明しているはずで、この義務教育学校化は志木第2小学校・志木第4小学校・志木第2中学校の3校を合併する計画なのに、なぜかリーフレットでは合併については一言も触れず「大規模校になると」という中途半端な前置きをおいて論点をずらそうとしているかのようです。本件においては2小と4小を合併することにより1クラスあたりの人数が増え、学級数が減るため先生の数も減るということが最大の問題点です

1クラスの定員と実際の人数は別物

上の説明では①への回答で「クラスの定員は変わりません」と下線付きで強調していますが、クラスの定員と実際の1クラスあたりの人数は別物ですので①では質問と回答が噛み合っていません

クラスの定員
法律(改正義務教育標準法)で定められた1クラスあたりの児童数の上限、令和5年度では小1〜小4が35人学級で他は40人学級、令和6年度には小5、令和7年度には小6も35人学級となり小学校全学年が35人学級になる

実際の1クラスあたりの人数
学年ごとの児童数を上記の定員で割り、割り切れなかった場合は1クラス増やす。例えば、定員が35で1学年の児童数が70人の場合、35人・35人の2学級編制になるが、1学年の児童数が71人であった場合は2学級では1つが36人になってしまうので1学級増やして23人・24人・24人の3学級編制になる。計算式でいうと「学級数=学年の児童数÷35(小数点以下繰り上げ)」となる

実際の例
別項『合併をともなう義務教育学校化の問題点』で詳しく解説していますが、上記の計算によるクラス追加は各学校別・各学年別に行われますので合併しなければ2小と4小で各最大1回ずつ、合計で最大2クラス追加になる(実際多くのケースでそうなっている)のに対し、合併してしまうと最大でも1クラスしか追加されなくなるので、結果的に学年ごとの学級数が減り、1クラスあたりの人数が増えてしまいます

市も1クラスあたりの人数が増えることを認めている
私はこの問題について市長への手紙で質問したところ、当初はリーフレットと同じ「定員は変わらない」という答えが返ってきましたが私が実際の数字をあげて「1クラスあたりの人数は増えるのでは」と再質問したところ以下のような回答が返ってきました

今井 あさと 様

志木市教育委員会学校教育課です。
令和5年7月5日付けでいただきました質問について、御回答いたします。

・・・<中略>・・・

1学級あたりの人数については、令和5年度の児童生徒数で換算した場合、前期課程(小学校)は概ね、30名程度、後期課程(中学校)は35名程度と想定しております。
この数値は、今井様が御提示の志木第四小学校の26.4名と比べた場合、その人数は多くなっておりますが、児童生徒数の増加という面だけではなく、小学校1年生から一つの学校や仲間として、児童生徒が関わり、小中学校の垣根を越えて、多くの児童生徒が共に学習、生活できるということに大きなメリットがあると捉えております。

この中では合併すると1クラスあたりの人数が増え、小学校は現在よりも多い30名程度になると市もはっきりと認めています。にもかかわらずリーフレットの中では「クラスの定員は変わりません」などとさも何も問題がないかのように言っているのは市民を欺こうとしているとしか思えません。また本当に人数上何も変化がないなら「空調の設置」云々などの部分は必要ないはずです。なお、上記の回答では1クラスあたりの人数が増えても別のメリットがあると言っていますが、これらは交換できるようなものではなく、義務教育学校にはいい点も期待できるから1クラスあたりの人数は増えても構わないなどというのはとんでもない暴論だと思います

小学校合併で先生も減る

先生が減らないとは一言も書かない不思議
リーフレットの②では「先生の数が減るのでは?」と自ら質問を立てておきながら不思議なことに回答では減るとも減らないとも答えていません。合併した場合、別項『合併をともなう義務教育学校化の問題点』に書いた通り令和5年度のデータで見れば5学級減りますのでリーフレットの言う「先生もこれまでと同じ基準で配置」されれば先生は5人減ることになります。はっきり「減る」と書くと反対論が高まるので「同じ基準で配置」という言い回しにしているのもやはり市民を誤魔化そうとしているかのように思えます。「先生を増員して、配置できる制度を活用」とも書いてありますが、その制度では合併で減る全員分を増員できるのか?その増員は永続的に可能なのか?などについては何も説明していません。もしその制度により合併で減る全員分を永続的に補填できるなら先生の数は減らないとはっきり書けるのではないでしょうか?またスマートクラスなどを継続という点についても合併によって先生の数が減ることとは別の話だと思います

小学校同士を合併することの弊害

本件の特徴は小学校同士の合併を含むことですが、それには以下のような弊害があります。これは教育上極めて重要な問題であるにも関わらず、市はそれをきちんと市民に知らせずウヤムヤにしたまま事を進めようとしています

  • 小学校を合併することで1クラスあたりの人数が増える
  • 小学校を合併することで学級数が減り先生の数も減る
  • 合併のない他の小学校より1クラスあたりの人数・先生の数の点で教育条件が悪化する

志木に義務教育学校は本当に必要なのか?

また上記に加え、小中3校を合併することで以下の問題もあります

  • せっかく3つの校舎があるのに2つの校舎に児童生徒を詰め込む
  • 残った1つの校舎の使い道が不明(有効活用の見通しが立たない)
  • 3校を合併すると1300人以上のマンモス校になる

義務教育学校化が目的になっているのでは?
先日の『小中一貫教育・義務教育学校に関する地域懇談会』で教育長はなぜ志木2中学区だけ合併するのかという点について他の学区は校舎間に距離があるために合併は困難、志木2中学区のように3校が隣接しているケースはかなり珍しく合併に好都合だからだと言っていました。つまり教育目的からみてこの学区での合併が必要だというのではなく、単に志木で合併できそうなのはここだけだからだというのが最大の理由のようでした。また懇談会ではコーディネーターという肩書の方が市側の立場でいろいろ説明していましたが、参加者の反対意見が続いたことに業を煮やしたのか「やることのメリット・デメリットではなく、やらないことのメリット・デメリットを考えてほしい」などと相手を煙に巻いて言いくるめようとする悪徳商法のセールストークのようなことまで言い出していました。これらを聞いていて私は教育長やコーディネーター氏は何がなんでも義務教育学校を作りたい、とにかく作りたいという気持ちばかりが先走っている、全国的にも珍しい隣接3校合併による義務教育学校という「成果」を誇りたいという欲がにじみ出ているように感じました。懇談会冒頭で教育長は義務教育学校化はあくまでも「手段であり目的ではない」と強調していましたが実際には目的になってしまっているようにしか見えませんでした。懇談会で義務教育学校化について市民からアンケートを取るべきではという意見を教育長が拒否したところにもそういう姿勢が垣間見えました

多くの義務教育学校は施設一体型
以下のグラフは文部科学省が公表している小中一貫教育の導入状況調査の結果という資料(リーフレット2ページに出ているアンケートと同じ出典)からの抜粋ですが現在の義務教育学校のほとんど(86%)は1つの校舎で9学年全員が一緒にすごす施設一体型で志木市が作ろうとしている施設隣接型の義務教育学校は7%しかありません。義務教育学校の最大のメリットとされるのは9学年が交流しながらともに学ぶということだと思いますが、志木市のように2つの校舎に別れてしまってはそのメリットが十分に発揮できないのではないでしょうか?また、別項『合併をともなう義務教育学校化の問題点』に書いたように現在の義務教育学校の大多数は全校で27学級以下の小規模校で志木市が作ろうとしている40学級を超えるようなマンモス義務教育学校は全体の10%以下という点も考え合わせるとますます本件の義務教育学校化には大きな問題があると思います

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>今井あさと

今井あさと

埼玉県志木市在住。敷島神社の近くに住んでます。27年間ほど都内の私立高校で非常勤講師をした後にフリーランスのプログラマ。非正規一筋の人生です(笑

非常勤講師で教えていたのは公民科(政治経済・現代社会・倫理など)。今でも政治や社会に強い関心があり、志木市の政治についても詳しく見てみようと思いこのようなブログを立ち上げました

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