昨年、2020年4月12日に予定されていた志木市議会議員選挙(定数14人)は届出日の4月5日までに14人しか立候補者が出なかったために無投票全員当選となりました。しかし、当選者の中には不思議なことをしていた方もいたようです
立憲民主党じゃないのに立憲民主党!?
上記の産経新聞の記事によると、今回当選者の一人である多田光宏議員は無所属なのに立憲民主党のロゴを入れた宣伝カーを作り「一度だけ」?走らせたということです。しかし、ご本人によると自分は立憲民主党という政治団体を作っており、その自分の政治団体の宣伝カーを作っただけなので何が悪いの?という言い分のようです
以下は総務省が公開している各政治団体の政治資金収支報告書のリストの一部です
確かに多田さんの作った立憲民主党が総務省に登録されていました。だから多田さんとしては、俺の立憲民主党の宣伝カーという主張になるのでしょう。自分は国政政党の立憲民主党の党員でも公認候補でもないけど、自分が作った政治団体の立憲民主党の公認なんだと。しかし勝手に名前を使われた国政政党の立憲民主党の方としてはたまったものではなかったでしょう。ところで上記のリストですが、他の団体と違い、立憲民主党だけ括弧付きで代表者の名前が入っています。やはり総務省の担当者も紛らわしいと思ったのでしょうか(笑
政治家性善説を逆手にとった?
政党名って商号とかではないので多田さんみたいなことをやっても違法ではないんですね。なんでそんな緩い規制になっているかというと、「政治家がそんな汚い真似するわけない」「政治家としてのプライドがあったら他党の人気をかすめ取るような姑息な真似はできるわけがない」という政治家性善説みたいな法思想が根底にあるのかもしれません。今回の件は多田さんにしてみれば法の盲点をついたクレバーな手法のつもりだったのかもしれませんが、私には政治家に対する市民の最低限の信頼を裏切るものであり、既成政党の名を使ってそこの支持者の誤認をさそい、票をかすめ取ろとする市民を愚弄した手法にしかみえませんでした
自作立憲民主党になる前はN国党だった
5日に告示され無投票で新議員が決定した志木市議選(埼玉県)で、無所属で立候補していた多田光宏氏(現職)が「立憲民主党」…
上記の記事によれば、多田さんはもとはNHKから国民を守る党(N国党)の初期メンバーで副代表もやっていたけど党首ともめて除名されてしまったようです。しかし除名後もN国党の名前を使って活動していたためN国党から警告を受け、N国党の名を使うのをやめて自作立憲民主党をはじめたという流れだったようです。選挙に勝つためになりふり構わずとにかく有利そうな看板をとっかえひっかえしていたという印象を受けます(本当に有利だったかはわかりませんが)。また、多田さんは他にも「希望の党」や「国民民主党」という政治団体も作っていたそうで、こうなるとあきれるというより、もうなんか笑っちゃう感じです。節操という言葉、ご存じないんですか?と聞いてみたいです(笑
以下は多田さんともめた事情を語るN国党側の主張です
関連リンク
志木市議会による議員辞職勧告決議可決
2020年4月23日、志木市議会は多田光宏議員に対する辞職勧告決議を審議、14人の議会で対象者と議長ははずれて12名で採決した結果、賛成8・反対4で可決されました。以下が採決の内訳です
当時の審議の様子は志木市議会の議事録(長い議事録ですが最後の方までスクロールするとこの決議の討論があります)から知ることができます。法的拘束力がないとはいえ、市民が選んだ(無投票ではありましたが)議員に辞職を勧告するというのはたいへんな重みがあることなので、全議員が発言して熱い討論が行われたのかと思ったら、説明者を含めて4議員しか発言しておらず、大した時間もかけずにサクッと採決して終わってしまっていることにちょっと驚きました。国会のように数百人議員がいるわけじゃなし、12人(議長と多田さんを除く)で審議しているんだから全員が発言する時間なんて十分にあるでしょう。1人5分ずつ発言してもたった1時間で終わります。「法的拘束力がないから強制できないし、どうせ多田議員も受け入れないだろう、厳しく批判したという形だけ作っておけばいい」という市民向けパフォーマンス決議だったのでしょうか?審議の中で「自民党に加入しているのに無所属を名乗っている人もいる」という主旨の発言(水谷議員)がありましたが、そういう議員にとっては下手に発言するとブーメランになりかねないという事情もあったのかもしれません
最終判断は市民の手で
この問題に対して、議会として対応することは必要なことだと思います。しかし、議員は市民から直接選挙で選ばれた直接代表であり、その地位はあくまでも市民の意思に基づくものです。その地位を問うのであれば、議会がやるべきことは、事実関係を詳細に調査し、全議員の意見、本人の弁明等をまじえて広く市民に公開し、最終判断は市民自身にゆだねるというのが筋だと思います。この一件、辞職勧告決議だけで終わらせて風化させてしまってはならないと思います