志木市のホームページを見ていると公募型プロポーザルという言葉が散見されます。公募型プロポーザルとは、市の事業を民間に委託する際、事業内容は市側が定め民間業者にその料金を競わせる競争入札とは違い、事業内容そのものを民間業者に提案してもらいその内容で競わせるものです。私は市のホームページをみていて3つほどの公募型プロポーザルの事業が気になりました
いろは親水公園魅力倍増事業(公募設置管理制度)
いろは親水公園のリニューアルを民間業者に委託しようとするもので、詳しい内容は市のホームページで公開されていますが、概略を要約すると以下になります
- 飲食施設(村山快哉堂がある中洲)
- ウォーターパーク(左岸・水を利用した子供の遊び場・約300㎡)
- プレーパーク(左岸)
- 園路広場・幼児遊具など
- 受託業者は一度認定されると20年間有効
飲食施設・ウォーターパーク・プレーパークは必須条件ですが、その詳細は受託業者の提案内容次第で、パークは有料になる可能性もあります。これらの計画は川沿いの公園としてはありきたりで、わざわざ民間企業に頼まないと実現できないのでしょうか?民間企業の場合は当然営利が求められますので、それが利用者に転嫁されたり市の支出を増加させることになります。また契約期間が20年とかなり長いですが、営利を優先して施設や遊具等のメンテナンスがおろそかになることはないか、あるいはその費用が利用者や市財政に余計に転嫁されないか、受託企業が途中で倒産や撤退した場合はどうなるのかなど、先々への様々な不安もあると思います
<参考リンク>
・いろは親水公園整備・管理運営事業 公募設置等指針
・いろは親水公園整備・管理運営事業 要求水準書
・いろは親水公園整備・管理運営事業に関する質問の回答
志木市中心市街地活性化基本計画策定及び中心市街地活性化協議会事務局支援業務に係る公募型プロポーザル
とても長くて一体これ何?って感じですが、国が進めているいわゆる地方創生の一環で、市街地活性化法という法律に基づき国が定めた基準を満たす活性化計画を作るとその実現のために国から補助金が出るというものです。地方自治体の乏しい自主財源でやるよりも補助金が出てお得だということで、すでに各地で様々な計画が実施されているようで、好取組事例として以下のようなものが紹介されています
- 駅前に商業交流・文化交流の複合施設を建設しイベントなどでにぎわいを創出
- いわゆるシャッター街防止のために、空き店舗紹介や店舗の改修費用・家賃の補助などを行う
- 居住人口を増やすために住宅購入への補助を行う
- 物産館やマルシェの開催で商業の活性化を図る
今回志木市が公募したのは、志木駅前からいろは親水公園までの本町通りを対象に、この計画を提案してくれる事業者で、大日本コンサルタント株式会社という会社が選ばれ、具体的には以下のような業務が委託されます
- 現状把握(基本条件の整理)
- 商工業者等へのヒアリング
- 中心市街地活性化協議会事務局の組織化と運営の支援方法の提案
- ワークショップの提案
- 基本計画の作成
しかしこれ、普通に市役所がやるべき仕事じゃないでしょうか?市役所の業務は多岐にわたると思いますが、私にはこれは主要業務の一つに思えます。その責任を放棄して安直に民間に頼る姿勢には疑問を感じます。この委託業務には上限1000万円の予算がつくようですが、市役所が独力でやれば市職員の人件費だけですむはずです
<参考リンク>
・志木市中心市街地活性化基本計画策定及び中心市街地活性化協議会事務局支援業務に係る公募型プロポーザルの実施について
・中心市街地活性化基本計画策定及び中心市街地活性化協議会事務局支援 業務委託プロポーザル実施要領
令和3年度「体力向上授業」委託事業に係る公募型プロポーザル
市が公開しているR3 体力向上授業委託プロポーザル実施要領という文書によると、以下のような小学校1年生の体育の授業を委託するようです
本市の小学生は、体の動かし方が分からず運動動作がぎこちない児童が多く、特に低学年の体力の二極化が課題となっている。この傾向は高学年~中学生になると解消されるため、小学校低学年段階での質の高い体育授業が重要である。本事業は、「投げる、走る、跳ぶ」の身体の動かし方に関しての専門的な指導技術を有する指導員による授業プログラムを小学校1年生へ提供し、小学生の体力向上を図るものである。
これは受託企業が派遣するインストラクターが一部の体育の授業を実施するようになるということですが、教育の民間企業への委託は特に慎重であるべきだと思います。民間企業の場合はどうしても数字で「成果」をあげることが求められてきます。また、個々のインストラクターも会社との関係でやはり「成果」を求められる可能性があります。つまり、「この指導によって○人の子どもが○○できるようになりました」という「成果」をあげたくなるわけで、それが子どもたちへの圧力になる、とくにできない子への圧力になる心配があります。インストラクターが悪意はなくても「がんばれ、がんばれ」「もうちょっと、もうちょっと」と指導すると、それでできるようになって笑顔になる子もいるかもしれませんが、できない子には大人が思う以上につらい圧力になることも多々あります。あるいはできないことで叱られたり、できるまで何度もやらされたりすることで傷つく子も出るかもしれません。そういう心のケアをきちんとできるのかどうかが非常に重要だと思います
志木市役所にだって人材はいるでしょ?
民間にはノウハウがあるからどんどん民間委託しようというならいっそ市長も民間委託したらという笑えないブラックジョークがよぎります。せっかく新しい市庁舎建てているのに仕事はどんどん外部委託というなら何のための新庁舎かとも言いたくなります。川沿いの小さな公園一つ独力で運営できない市役所って一体なんなんでしょうか?民間のノウハウと言うがそれはその企業が地道な企業努力で積み上げてきたもののはずです。市役所だって同じ努力をするべきじゃないでしょうか?街づくりに単純な成功の秘訣なんて存在せず、志木には志木にあった街づくりを模索するしかないはずです。そのために多少時間はかかっても市の職員の中にエキスパートを育ててゆく、市民や地元の企業と一緒になって考えてゆく、そうして志木の市役所だからこそ持っていると言える志木のノウハウを蓄積してゆく、新庁舎が外見だけの立派さではなく、そういうノウハウを蓄積した中身のある新庁舎になってくれることを願います。民間に高いお金を払って委託すればそれなりに結果を返してくれるでしょう。それは市長の実績としてホームページやSNSで誇るのには都合がいいものなのかもしれません。しかし外部に頼らず、自前でやれるようになればそのお金は市民のために使うことができるのだということを忘れてほしくないと思います。民間活力というなら市役所活力だってあっていいはずです。そういう意欲をもった市の職員の人もきっといるんじゃないかと信じたいです